仕事の評価と従業員エンゲージメントの関係
従業員エンゲージメントとは、従業員の企業に貢献したいという愛社精神や愛着心を指す言葉です。大きく「理解」「信頼」「意欲」の3つの要素で構成されており、一見活躍している従業員でも、この要素のどれか1つが欠けている場合は従業員エンゲージメントが高いとはいえません。
従業員エンゲージメントを高めるためには、3つの要素を満たす具体的な施策を講じる必要があります。その代表的な例が人事評価制度の抜本的な改善です。適材適所の人事配置、明確な評価基準、適切な報酬など、人事評価制度を整備することで、従業員も「自分の努力が報われる」と意識するようになり、自ずと従業員エンゲージメントが向上します。仕事の評価と従業員エンゲージメントは密接な関係にあるのです。
従業員エンゲージメントを高めるための仕事の評価方法
従業員エンゲージメントを向上させる人事評価制度の見直し。実際には、どのような施策を講じればよいのでしょうか?従業員エンゲージメントを高めるための具体的な評価方法を紹介します。
MBO
MBOは「Management by Objectives」の略語で、目標管理制度と呼ばれる最も代表的な評価方法です。部署単位や個人単位で目標を設定し、目標の達成度をもとに評価を行います。「マネジメントの父」と呼ばれるピーター・F・ドラッカー氏が提唱した評価方法であり、客観的で明確な評価ができるため、従業員エンゲージメントを高めることが可能です。
OKR
OKRは「Objectives and Key Results」の略語です。企業が定めた目標を部署単位や個人単位で細分化し、それぞれの目標に対する成果などを評価する方法です。MBOは目標の共有範囲は上司と部下ですが、OKRは目標の共有範囲は企業全体になります。そのため、従業員全員に帰属意識や貢献意欲を持たせ、従業員エンゲージメントを高めることができます。
バリュー評価
従業員が企業理念に沿った行動を実践できているかどうかをチェックする方法がバリュー評価です。バリューとは「行動規範」や「価値観」を意味します。仕事の成果よりも行動を重視するため、行動評価とも呼ばれます。従業員ひとりひとりが自社の理念を理解し、それを行動に起こすようになることから、従業員エンゲージメントの向上につながります。
360度評価
360度評価は、複数の立場から評価を受ける評価方法です。上司・同僚・部下・クライアントなど、多角的な視点(=360度)から評価されるため、従業員も結果に納得しやすい点が特徴です。客観的で公平な評価が期待できる360度評価は、従業員同士の理解度や信頼度が高まりやすく、従業員エンゲージメントが向上します。
ピアボーナス
従業員同士が互いを評価し、特別報酬を送り合うシステムがピアボーナスです。具体的には、従業員が上司・同僚・部下に対し、専用ツールを使って感謝の気持ちを少額のポイントやメッセージなどに変えて送ります。あらゆる仕事が評価対象になるため、従業員のモチベーションにプラスに働き、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、定められた行動特性に則って評価を行う方法です。具体的には、継続的に高い業績を上げている従業員の行動様式や特性を基準として、従業員の能力や成果などを評価します。評価基準が明確なため、評価の信頼度=企業の信頼度となり、結果的に従業員エンゲージメントを高めてくれます。
リアルタイムフィードバック
リアルタイムフィードバックは、従業員の働きや成果に対し、即座に高頻度でフィードバックを行う評価方法です。ひとつひとつの業務ごとに評価を行うため、信頼性や確実性が高くなり、仕事の細かい軌道修正やフレキシブルな対応も可能になる点が特徴です。ひいては、職場のコミュニケーションを活性化させ、従業員エンゲージメントが高まります。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、従業員をランク付けしない評価方法です。数字や記号を用いた評価や年次評価を廃止し、従業員が設定した目標に対して、上司が定期的にフィードバックを行います。高頻度で1on1スタイルの面談を実施するため、評価の信憑性が高まります。
従業員の仕事を評価する際の注意点
人事評価を行う場合、評価基準が曖昧で不明確であれば、従業員は不満や不信感を募らせ、従業員エンゲージメントを下げる結果になりかねません。従業員の仕事を評価する際の注意点を具体的に見ていきましょう。
評価基準を明確にする
従業員の仕事を評価する場合、評価基準を明確にすることが何よりも重要です。曖昧でわかりづらい評価基準は、従業員の不満や不信感につながり、愛社精神や貢献意欲を失わせてしまいます。明瞭な評価基準を設計し、従業員に公表する姿勢が重要になります。
職種ごとの評価基準を設ける
営業・事務・技術・広報など、職種ごとに評価基準を設けることも従業員の仕事を評価する際に重要です。同じ企業の従業員であっても、評価対象となる達成目標は職種によって異なります。偏りのない、多様性を持った評価制度を設計できれば、従業員エンゲージメントの向上につながります。
公平性を遵守する
従業員全員が納得できる公平性を遵守した評価を行います。たとえば、特定の職種・部署・従業員だけが高評価を受ける、評価担当者の主観によって評価が左右されるなど、不平等さが現れた評価は、他の従業員から反感を買い、企業の求心力が低下します。
企業に適した人事評価制度を導入する
設計した評価制度がどれだけ優れた仕組みであっても、企業の理念や規模にあわず、運用が難しくなるケースがあります。評価基準を活かすことができなければ、従業員の仕事を正当に評価することはできません。現状の企業状況に適した無理のない人事評価制度の導入を意識します。
随時フィードバックをおこなう
定期的な評価とは別に、ひとつひとつの仕事に対して随時フィードバックを行うことも重要です。仕事のフィードバックを受けることで、従業員は高い目標を持って意欲的に業務を継続できるようになります。
適正な人事評価が従業員エンゲージメントを向上させる
人事評価制度の導入や改善は、従業員エンゲージメントの向上に直結する施策です。誰もが「正当な評価を受けている」と納得できる明確な評価基準を設計し、実施することが従業員エンゲージメントを高めるポイントです。
客観的かつ公平な評価を実現できる企業は、従業員との間に強固な信頼関係を築くことができます。