コラム

組織改善に有効なマネジメントサイクルの種類、PDCAの回し方や具体例を説明

組織運営を行っていると、「同じミスを繰り返す」「生産性が低下する」など、管理上のリスクが浮き彫りになることがあります。そのような課題に取り組むべく、組織改善を行うなら「マネジメントサイクル」を活用するのが有効です。マネジメントサイクルにはさまざまな手法があるため、経営者と従業員に適した方法で組織のあり方を考えることが大切です。

組織の改善を図るマネジメントサイクルとは

マネジメントサイクルとはなにか、組織においてなぜ必要とされるのかを解説します。

マネジメントサイクルとはどのようなものか

マネジメントサイクルとは、目標を達成するために必要な業務を円滑化するための仕組みのことです。
多くの企業で取り入れられているPDCAサイクルもマネジメントサイクルのひとつです。
マネジメントサイクルは「どうすれば企業が目標を達成できるか」「効率的な業務の遂行はどうすべきか」を追求する行為といえます。
業務を最大限効率化するためには、マネジメントサイクルを取り入れることが重要です。

マネジメントサイクルの始まり

マネジメントサイクルにはさまざまな手法がありますが、基礎となる理論を築いたのはフランスのフランスの実業家、アンリ・ファヨールです。
ファヨールは、企業経営には管理が最も重要であると提唱し、現代にも通じる「管理過程論」の始祖となりました。
ファヨールの著書「産業ならびに一般の管理」では、企業の経営活動を以下の6つに分類しています。

  • 技術活動
  • 商業活動
  • 財務活動
  • 保全活動
  • 会計活動
  • 管理活動

ファヨールが提唱した理論をもとに、現代では多くのマネジメントサイクルが企業経営で活かされているのです。

有名なマネジメントサイクルの手法

マネジメントサイクルには有名な手法が5つあります。

  • PDCAサイクル
  • PDSサイクル
  • OODAループ
  • CAPDサイクル
  • PDRサイクル

PDCAは現代で一般的に運用されているマネジメントサイクルで、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つを回すことで、業務効率の改善に繋げます。

PDSサイクルはPlan、DoまではPDCAと同じで、See(評価・見直し)が入っています。
PDCAサイクルよりもシンプルでスピーディーにサイクルを回せるため、短期的な目標を達成する際におすすめです。

OODAループは新規事業や部署の立ち上げで利用するマネジメントサイクルで、意思決定を迅速に行うことができます。

CAPDサイクルはPDCAサイクルの順序を変えたもので、事業の初期に活用することで改善点を明確にする手法です。

PDRサイクルはトラブルへの対処や変化への適応をスムーズにするもので、他のマネジメントサイクルよりも取り組みやすいと言われています。

事業内容や組織の成熟度に合わせて、必要なマネジメントサイクルを利用してください。

マネジメントサイクルの重要性

マネジメントサイクルは、企業経営において、日々変化する社会情勢に適応するために必要なシステムです。
周囲の状況は変わっていくのに、企業が停滞していては、大きな流れに取り残されてしまいます。
企業の経営を時代に合わせて効率化していくとともに、課題を解決することでさらなる成長が望めます。
また、業務の効率化は従業員のモチベーションにも関係するため、生産性の向上や離職率の低下も期待できます。

マネジメントサイクルの種類

マネジメントサイクルの代表的な5つについて具体的に紹介します。

PDCAサイクル

PDCAサイクルはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を行いながらマネジメントを行う方法です。
計画を立ててそれに基づいて実行、その後の評価を行い、改善案を検討して再度計画・実行していく流れです。
短期間でPDCAサイクルを回すことで効率的に業務を改善できるため、企業経営でよく利用されるマネジメントサイクルとなっています。
ただし、PDCAにこだわり過ぎると現実と乖離しやすくなるため、その都度現場目線での計画を検討することが大切です。

PDSサイクル

PDSサイクルはPlan(計画)、Do(実行)、See(評価・見直し)を1つのサイクルとする手法です。
PDCAと違い、Seeの過程で評価と改善案の検討を行うため、PDCAよりも短期間で業務のマネジメントを行う際に適しています。
PDCAよりもサイクルを回しやすい分、計画立案をしっかり行わなければ上手く回らなくなる点に注意してください。

OODAループ

OODAループはObsreve(観察)、Orient(仮説構築)、Decide(意思決定)、Act(実行)の4つの過程からなります。
OODAの主な目的は効率的な意思決定であり、事業立ち上げの際の課題に対して、最適な解決策を検討する場合に用いられます。
OODAループは、経営者や管理者が利用するマネジメントサイクルであり、意思決定の場面で利用する手法です。

CAPDサイクル

CAPDサイクルは、PDCAと同じ過程を順序を入れ替えて行う手法です。
PDCAとは違い、事業立ち上げの初期に現状を把握し、改善計画を検討してから実行に移すため、スムーズな業務運営ができます。
ただし、最初の評価や分析が誤っているとつまずきやすいので、評価・分析の精度が重要になります。

PDRサイクル

PDRサイクルはPreparation(準備)、Do(実行)、Review(評価)のサイクルからなります。
PDCAに比べるとシンプルな手法をとっているため、素早くサイクルを回せるとともに、どのような業務でも利用しやすい点が特徴です。
しかし、一つひとつの過程がおざなりになる可能性も考えられるため、運用にはリーダーシップをとれる人が必要になるでしょう。

代表的なマネジメントサイクル「PDCA」が回らない原因

PDCAサイクルが上手く回らない場合、いずれかの過程に課題があるのかもしれません。どのような原因があるのか紹介します。

Planに原因がある場合

Planで考えられる原因としては、次のような内容が挙げられます。

  • 計画が現実と乖離している
  • 仮説が間違っている

そもそもの計画が現場と合っていない場合は、PDCAサイクルが上手く回らなくなります。
仮説に誤りがないか、現実的な内容になっているかを振り返ってみましょう。

Doに原因がある場合

Doで考えられる原因としては、次のものが挙げられます。

  • 行動計画が具体的でない
  • 実行者が計画を理解できていない

行動計画や取り組み内容が従業員に伝わっていないと、実行段階が上手く進みません。
マニュアルほど細かく決定する必要はありませんが、従業員にどのような行動を取ってほしいのか、具体性のある内容のほうが実行に移しやすいでしょう。

Checkに原因がある場合

Checkに原因がある場合、次のような要因が考えられます。

  • 評価基準が人によってバラバラ
  • 評価が主観的
  • 明確な評価基準を定めていない

このような状況では、誰が評価を行うかによって、その後の改善策にもバラつきが生じてしまいます。
評価者を決定するか、評価基準を統一するのがよいでしょう。

Actionに原因がある場合

Actionに原因がある場合、課題に対する正しい改善策が立てられていない可能性があります。
PDCのいずれかに問題があり、改善策を導くことができないケースも考えられます。
効果的な改善策を見い出せないのなら、一度PDCの過程を振り返ってみることをおすすめします。

マネジメントサイクル「PDCA」の上手な回し方

PDCAを上手く回していくには、ポイントを押さえて運用することが大切です。

明確な目標を立てる

マネジメントサイクルを効率的に回すには、最初にどのような目標を立てるかが重要です。
「売上アップ!」「顧客獲得!」のような漠然とした目標では、従業員も具体的な実行方法がわかりません。
目標は数値化し、内容も具体的にするのがよいでしょう。

経過を記録する

PDCAサイクルには評価・改善のステップがありますから、計画から実行までのプロセスを記録しておきましょう。
記録したプロセスを振り返ることにより、課題を乗り越える方法や対策の立案、改善策を具体的に検討しやすくなります。
また、プロセスが記録されることで将来に役立つノウハウにもなり、企業の財産として活用することができます。

課題の原因を追究する

評価や改善策を検討するには、どこに課題があったのか、どのような原因でそうなったのかを知ることが大切です。
原因を追究することで客観的な評価ができ、同じ課題にぶつかるリスクを減らすことに繋がります。
改善策を見いだしてスムーズにサイクルを回すためにも、原因を追究することが重要です。

マネジメントサイクル「PDCA」の具体例

PDCAサイクルを活用する具体的な事例を紹介します。

ホームページからの成約率を高める

公式ホームページのアクセス数と成約率のアップを目標としたPDCAサイクルを設定します。
具体的な数値は現実と乖離がない範囲に設定し、アクセス数を増やす施策と成約率を高める具体的な計画を検討しましょう。
「アクセス数のアップ≠成約率の上昇」ではないため、それぞれをどのように対策し、実行していくかがPDCAサイクルの鍵です。
結果が良好でも、予想より下回っても、どちらの場合でも評価と課題を検討し、取り組むべき改善策を明確にしてください。

営業の契約件数を増やす

営業に重きを置いた施策を検討する場合、「営業の契約件数を月間○件増加」「1人当たり○件獲得」のような具体性のある数字を打ち出します。
その中で、目標を達成するためにはどのような営業を行うべきか、行動計画を立てて実行しましょう。
実行するなかで浮上した課題や上手くいったポイントを振り返り、従業員間でフィードバックします。
従業員一人ひとりの意見を反映しながら、改善策を盛り込んだ新たな行動計画を立ててください。
ただし、いつまでも同じ営業目標を掲げるのではなく、一定の期間で変更するようにしましょう。
長期間同じ目標を提示され続けると、従業員にとっては終わりの見えない作業に感じられる場合もあるため、注意が必要です。

効率的に組織を管理するなら、マネジメントサイクルを意識しよう

マネジメントサイクルは、経営者はもちろん、組織における部署単位でも効果的なマネジメントの方法です。
マネジメントサイクルを取り入れた最初のうちは、プロセスに追いかけられているような気がして焦りが生じるかもしれません。
しかし、繰り返すうちに課題が明確になり、改善策もスムーズに打ち出せるようになります。
企業経営を効率化するだけでなく、従業員のモチベーション向上にも繋がるため、マネジメントサイクルを意識することは業務遂行のうえでもっとも重要なポイントと言えるでしょう。

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