組織エンゲージメントとは
エンゲージメントとは愛着や信頼を意味する言葉であり、ビジネスでは、従業員エンゲージメントや組織エンゲージメントという言葉として使われることがあります。
組織エンゲージメントとは、企業や組織とそこで働く従業員の信頼関係を示し、エンゲージメントが高いほど、従業員が組織に対して信頼や愛着を持っていることを意味します。
組織エンゲージメントを高めるには、企業の目標や経営理念、事業計画などに従業員から共感してもらうこと、また、貢献したいと思ってもらうことが重要です。
組織エンゲージメントが向上すると、従業員同士の結束力や連帯感が強化され、企業や組織のために尽力してくれるでしょう。
組織エンゲージメントの必要性
なぜ組織エンゲージメントは必要なのか、企業の観点から解説します。
離職率を抑える
従業員にとって、会社は「生きるために働く場所」であり、他に良いところがあれば転職してしまう可能性もあります。
組織エンゲージメントが低い場合、このような従業員が増えていき、優秀な人材が競合企業に流れてしまうことが考えられます。
企業が人材育成にかける時間とコストは大きく、多くのリソースをつぎ込んだ人材が他社に転職してしまうのは大きな損失です。
組織エンゲージメントが高い従業員に会社への愛着や貢献意欲を持ってもらうことは、企業側にも大きな意義があると言えます。
従業員のモチベーションアップ
従業員は一人ひとりが別の人間であり、生活習慣、性格、趣味、嗜好などもさまざまです。
従業員に個性があるように、モチベーションが高い人もいれば、低い人もいるものです。
もし、従業員全員のモチベーションが低い状態であれば、企業全体の生産性は大きく低下し、斬新な発想や新しいアイディアなども生まれないでしょう。
従業員のモチベーションと組織エンゲージメントには相関関係があり、組織エンゲージメントの向上は従業員の貢献や生産性に大きく影響します。
その点を鑑みても、企業は組織エンゲージメントを意識し、従業員から愛される会社になることが求められます。
組織エンゲージメントが高まるメリット
組織エンゲージメントを高めることで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、高い組織エンゲージメントが企業にもたらす利点について紹介します。
従業員のモチベーションアップ
組織エンゲージメントが向上することで、従業員のモチベーションアップが期待できます。
エンゲージメントの高まりは、従業員の就労意欲だけでなく、企業と同じ方向へと進むモチベーションをも高めることに繋がります。
組織エンゲージメントの向上は、従業員が業務への意義を見出し、彼ら自らが積極的に仕事を作り出すようになるはずです。
従業員のモチベーションは企業の生産性にも深く関与するため、企業として組織エンゲージメントを高めるための努力を惜しまないようにすべきでしょう。
離職の防止
組織エンゲージメントが高い企業の従業員は、会社への愛着・帰属意識が高い状態であり、「会社に貢献しよう」という気持ちが強くなっている状態です。
組織エンゲージメントが高い人ほど離職率が低く、長く働いてくれることがわかっています。
企業にとっては、従業員にかけた教育の時間とコストが無駄にならずに済み、優秀な人材を確保できるメリットがあります。
組織エンゲージメントを意識することで、従業員から長く勤めたいと思われる会社になるはずです。
生産性と顧客満足度の向上
組織エンゲージメントが高い従業員は、会社の理念や事業目標、方向性を理解し、同じゴールを目指して働こうとします。
その結果、熱心に仕事に取り組み、従業員同士での連携もスムーズになり、生産性の向上が期待できます。
また、従業員が意欲的に仕事を行うことで、顧客に対して質の高いサービスが提供できるため、顧客満足度も向上します。
組織エンゲージメントを高めることは、従業員の働き方だけでなく、顧客にとってもプラスに作用することでしょう。
組織における従業員エンゲージメントの要素
組織における従業員エンゲージメントは3つの要素で構成されています。
どのような要素があるのか紹介します。
理解度
理解度とは、従業員が会社の方針や企業理念を受け入れて同じ方向を向き、会社の考えを支持している度合いを示します。
理解度は、企業が従業員に経営方針を打ち出し、理解を得ることで高まります。
理解度が高まるほど会社と従業員の絆が深まり、志を同じくして仕事を進めることができるようになるでしょう。
共感度
共感度は、従業員が会社や所属する部署、同僚への帰属意識や愛着を持っている状態を示しています。
共感度が高い従業員は、周囲との一体感を生み出し、社内コミュニケーションを円滑にします。
また、共感度が高い従業員の「会社のために働きたい」という気持ちが周りにも伝わり、会社へ貢献する従業員が増える可能性もあるでしょう。
行動意欲
行動意欲とは、従業員が自分に求められている以上の仕事をやろうとする姿勢のことです。
従業員が主体的に行動し、周囲がその行動を評価することで、行動意欲はさらに高まります。成功も失敗も、従業員に対して真摯にフィードバックすることで、「会社は自分の行動をしっかりと見守ってくれている」「自分は会社にとって大事な人材である」ことを従業員に理解してもらえます。
組織エンゲージメントを左右する8つの要素と対策
組織エンゲージメントを左右する8つの要素について、対策と併せて見ていきましょう。
組織文化
従業員エンゲージメントを高める組織文化とは、どのようなものなのでしょうか。
例えば、年に数回、従業員の営業成績を評価することも対策のひとつになります。
しかし、もっと頻繁に従業員同士でお互いを評価し合える組織文化があるといいでしょう。
従業員からのいい評価がインセンティブに繋がるシステムや、お互いを気軽に褒められる組織文化があれば、社員同士の結束力も強くなります。
社会的認知度
従業員にとって、自分が所属している会社を多くの人に知ってもらうことは、社会的認知度の向上に繋がります。
企業の社会的認知度を上げるためには、より多くの人の目に触れ、関心を持ってもらうための施策が必要です。
自社の製品・サービスをPRするため、ないしは、社風の特徴を伝えるためにSNSアカウントを開設したり、イメージキャラクターを作るなどは、社会的認知度を高める対策となるでしょう。
仕事へのやりがい
仕事へのやりがいは、年齢を重ねると小さくなり、若い人ほど大きくなると言われていますが、ベテラン社員にも新入社員にも、やりがいをもって働いてもらいたいものです。
せっかくのベテラン社員でも、やりがいが感じられないと生産性が低下し、会社にとっても不利益です。
従業員にやりがいを感じてもらうためには、職場環境や仕事内容に変化を加えてみることも対策になるでしょう。
例えば、決まった曜日・時間帯だけ普段とは違う部署で働いてみる、あるいは、通常業務以外の仕事に取り組むことで刺激になり、漫然と仕事をすることは少なくなるはずです。
成長
組織エンゲージメントを高めたい場合、学習意欲の高い従業員に対して研修や経験の機会を用意することが対策になるでしょう。
意欲のある従業員は、「この会社でもっと成長できる」と手応えを感じ、自分の未来のために、そして会社のためにも尽力してくれるはずです。
人間関係
人間関係を大切にすることも、組織エンゲージメントの向上に重要な要素です。
多くの企業では、納涼会や忘年会などの親睦会を年に2回程度開催しているはずです。
しかし、飲食店を予約して宴会を開くだけでなく、趣向も新たに、普段仕事をしているオフィスで交流を図るのもよいでしょう。
オフィスを装飾する、あるいは宴会に向けて細かな準備をすることで、従業員が「みんなのため・会社のために貢献している」という気持ちを持つことができます。
オフィスでのイベント開催は、参加者がリラックスできるため、従業員同士の交流も生まれやすくなるはずです。
環境
組織エンゲージメントを高めるには、従業員のプライベートの充実も鍵になります。
従業員が働きやすい環境を意識するなら、「フレックスタイム制度」を取り入れるのも一案です。
フレックスタイム制度を導入することで、従業員の働き方に自由度が増し、仕事に集中して取り組めるようになります。
従業員のプライベートが豊かになることで生産性の向上も期待できるため、フレックスタイム制度が取り入れられる業種であれば、導入を検討してもよいでしょう。
評価
従業員の貢献意欲を高めるためには、目に見える形で評価することが大切です。
例えば、毎月の仕事を評価して表彰する制度や、従業員の良いところや伸ばしてほしいところを上司が丁寧に伝えるなど、従業員が尽力した結果を形や言葉にして褒めてあげるとよいでしょう。
ただし、評価が得られなかった一部の社員から不満が出るおそれもありますから、従業員への細かな配慮も忘れないでください。
報酬
従業員にやりがいや楽しみを持ってもらいたいなら、仕事に対する報酬やプレゼントもおすすめです。
仕事に対する報酬で代表的なものが、インセンティブの付与です。
成績に応じて給与とは別に報酬を用意すると、従業員のモチベーションアップに繋がるでしょう。
また、プレゼントは毎月1回程度、報奨金や家電などを用意することで、従業員の仕事への意欲が高められます。
組織エンゲージメントを高める方法
エンゲージメントを高めるにはどのような方法があるのかを紹介します。
定期的なエンゲージメントサーベイの実施
組織エンゲージメントを高めるには、定期的なエンゲージメントサーベイを実施するのがよいでしょう。
組織エンゲージメントは日々変わっており、調査の間隔を開けすぎると現状を把握しにくくなります。
定期的に実施することで従業員の状況を把握でき、早期に対策が打てるようになります。
エンゲージメントサーベイを人事に反映する
エンゲージメントサーベイで従業員の状況を把握したのち、人事や評価に反映しましょう。
現在の部署に不向きな人材がいる可能性もあるため、最適な部署に人員を配置すべきです。
能力が発揮できる部署に従業員を配属できれば、やりがいが高まり、離職率も低下します。
エンゲージメントサーベイを第三者に依頼する
エンゲージメントサーベイを自社で行うこともできますが、第三者機関から客観的な評価・分析をしてもらうのがおすすめです。
自社では主観的な分析が入りやすいため、会社を外から判断する目を入れることが大切です。
エンゲージメントサーベイのサービス内容は企業によってさまざまですから、数あるサービスの中から最適なものを選んでください。
組織エンゲージメントを理解して効率的に高めよう
組織エンゲージメントを高めるには、自社に取り入れる施策を検討することが大事です。
また、エンゲージメントサーベイを行うことで従業員の状態を把握し、調査結果を従業員にフィードバックして、働きやすく愛される会社を目指しましょう。